予定調和の復権

痛いニュース(ノ∀`) : フジテレビ「ゴールデンタイムの視聴率が悪いのはゲームのせい」 - ライブドアブログ
痛いニュース(ノ∀`) : TV番組製作者「今のテレビはつまらないとは思わない」…ネットの影響だという意見も - ライブドアブログ


痛いニュース(ノ∀`) : 小島よしお、空気読めず「24時間テレビ」熱湯コマーシャルの熱湯がぬるま湯だとバレる - ライブドアブログ


この出来事は、現在のメディア関係を考察する上でとても興味深い。


アンチという存在は、ある強力な思想やコンテンツに対して否定あるいは批判するもののことである。フジテレビ系列で放送している『27時間テレビ』は、感動というフィナーレに向かって一直線に頑張る予定調和『24時間テレビ』へのアンチテーゼとして誕生した。

1997年当時、『27時間テレビ』のCMを見た私は静かに感動していた。フジテレビには気合の入ったテレビマンがまだ居るのだと。事実、初期の『27時間テレビ』は「頑張ってグダグダ」していた。予定調和を崩すために、あえて予定調和らしきコンテンツを提示しそれを破壊する手法を採っていたのである。番組名をもじり、予定調和を破壊する。すべて台本どおりに構成された感動予定調和番組に対する強力なアンチテーゼの意思が窺えたものである。


24時間テレビ』のアンチとして誕生したこの番組は、番組名をもじり、「頑張らない」、中味を求めないことで既にアンチとしての使命を果たしていた。いわば大掛かりな「出オチ」だったのだ。しかし、2007年現在でもこの番組は続いてしまっている。存続・維持が目的になってしまった『27時間テレビ』はその様相を変えつつある。番組ではなく出演者自身がグダグダになってしまったのだ。
番組初期、予定調和を崩すという目的に向かうには出演者自身は頑張らなければならなかった。それを素人、時間、あらかじめ用意してある構成の不備によって崩し、結果としてグダグダになるから面白かったのである。しかし現在では出演者が積極的に番組を壊そうとしてしまっている。「グダグダ」自体が面白いんだ、と勘違いした出演者が頑張らなくなってしまったのである。それをスタッフが何とかカタチにしようと「頑張る」ようになってしまった。本来の手法である「構築⇒破壊」ではなく「破壊⇒構築」になったのだ。これでは予定調和の感動番組と何ら変わりない。2007年現在、番組は『西遊記』の宣伝特番という悪ふざけの極致に至っている。


27時間テレビ』が没落していくなかで『24時間テレビ』はその求心力を取り戻してきている。その理由はネットの存在、とくに動画共有サービスの普及が大きく関係している。テレビとネットは対立するものではないのか?と思われがちだがそうではない。アンチが現象形成の重要な役割を担うのだ。
痛いニュース」に代表されるように、2chはテレビを監視するジャーナリストとして機能している。ただそれはテレビコンテンツの「穴」を発見することに特化している。『24時間テレビ』の例でいえば、アンガールズがマラソンに挑戦した際の触らないで事件。今回の小島よしおのぬるま湯事件。これらの事件の発端は、作りこまれているはずの番組の穴を探した結果である。ネットに棲むジャーナリストは「穴を探す」というありもしない使命感に駆られ、せっせと『24時間テレビ』を録画する・・・。動画をネットにアップし、それに対する否定・擁護のコメント、これらによっていわゆる祭りになるのだ。
ここで恐ろしいのは擁護派もアンチも同じく「予定調和」を望んでいる点である。感動を求めるのも予定調和が前提。穴を探して盛り上がるのも予定調和という前提の崩壊がなくては成り立たない。他の番組で小島よしおが上島の芸を潰そうとぬるま湯を暴露しようとニュースにはならないだろう。『24時間テレビ』という強力な予定調和の磁場を発する番組だからこそここまでのニュースになっているのである。


テレビは予定調和が前提となっている、このおかげでテレビはネットと幸福な蜜月関係を結んでいるといえるだろう。信者はともかく、アンチもテレビというメディアそのものを見捨ててはいないということだ。むしろアンチのおかげで番組が保たれているといっても過言ではないだろう。本当にその番組を「面白くない」と思っている人はまず番組を見ないのだから。


※筆者は『24時間テレビ』を否定する気はありません。偽善だとか横領だとか言われることもあるでしょうが、実際これだけの募金を集めることができるわけだし何もしないよりは幾分マシでしょう。