お笑い天下一武道会

「ナイツ」
・ボクシング出身の総合スタイル
・高い技術力でボディの急所を的確に繰り返し当てる
・パンチ力はないが手数で確実に判定勝ちを収める老獪さを持つ


予選でスタミナを奪われてしまったために、決勝ではフットワークが重い。
ワン・ツーを基調とした単調で散発的な攻撃のためにKOを決めきることができない。
もっと上下に打ち分けたり、要所で的確にパンチを集めることができればジャッジの印象はよかっただろう。



NON STYLE
・正統派空手
・オールレンジ対応可能で、技の種類・威力ともにハイレベル
・型・実戦ともに実力派、地方大会では既に優勝経験アリ


強靭なスタミナで下半身が安定しているために軸がぶれない。
フェイントを交えて相手に隙をつくり、そこに的確にそして多彩に攻撃を集める。
常に自分の距離で勝負し続け主導権を握っていた。
自分の距離に引き込む技術力と、我流を通す精神力は比類なき才能といえるだろう。



「オードリー」
・総合出身のトリッキースタイル
・意外性と積極的攻性が売りで人気も高い
・経験不足だがそのぶん怖いものなし


序盤からバックハンドブローや胴回し回転蹴りで会場を沸かせる。
ただ、相手との距離感やダメージ量を測らず攻撃を振り回すのは経験不足ゆえか。
当たればフラッシュダウンは奪えるが、芯に残るダメージは与えられない。
カウンター気味に出した「鬼瓦」は、逆に自身のダウンとして判定されてしまった。



今年度の結果は、M-1の初心を思い起こさせるものであった。
総合お笑い格闘技の世界では、どんな型であれ、とにかく相手を笑い倒しさえすればよい。
その意味では、トリッキーなスタイルで大技を連発し、会場を沸かせるオードリーは非常に見栄えのする選手だ。
ただ、本大会はなんでもアリの総合お笑い大会ではない。
本大会は「漫才道」を志す者の頂点を決定するものなのである。


「誰が一番おもしろいか」ではなく「誰が一番道を究めたか」
「正統なものを正当に評価する」そういう大会なのだ。


キャラ性による優劣、ただ多いネタ数、間を考えない捲くし立て、一発ギャグ、といった「技」が伴わないものは評価の対象から除外される。
そして、楽しんでやれているか、さらには迷いといった「心」が伴わない者は減点対象にもなりうる世界である。
原点回帰の再確認という意味でも NON STYLE の優勝は至極真っ当で意義ある結果といえるだろう。
その分、ジャッジの評価と視聴者の評価が分かれていることに若干の危惧を抱かざるをえない。


視聴者はトリッキーなスタイルに見慣らされているのではないか?
視聴者は正統なものを正当に評価することができるのか?
知っている選手、好きな選手を過大評価しているのではないか?


客は客観的な評価を下す必要はないのかもしれない。
客はただ好きな選手を応援し、「おもしろ」ければ何でもいいのかもしれない。
ただ、この現象は、大会第一回目の「大阪会場の悪夢」が全国規模に拡大しているかのようにみえて仕方ないのだ。