最恐

K-1 WORLDMAX 日本代表決定戦。
ベストバウトは宍戸大樹×尾崎圭司だろうか。

シュートボクシングは重心を中央に据えて、相手の懐に入り、手数で圧倒する。
宍戸は良くも悪くも、スタイルによる攻守の切り替え時のガードの甘さをよく表していた。
テコンドーは遠距離から飛び込み、カウンターと一発を狙う。
尾崎はテコンドーには無いローキックを克服し、パンチの重さで相手に勝った。
この試合はファイトスタイルの違いによる相手との距離のとり方がよく出ている。


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http://ne-ta.com/2007/02/20070207013431.html



私はもう、K-1を「最強決定戦」ではなく、それぞれの選手が出身の格闘技の看板を背負った「異種格闘技戦」という観点でしか楽しめなくなってきている。
だから、シュートボクシングとテコンドーの試合をベストバウトとした。
K-1異種格闘技戦という原点に返りつつある。


プロレスの物語が徐々に受け入れられなくなっていった頃、格闘技は「リアル」へとシフトしていく。
90年代初頭、地上波放送の新コンテンツとしてお茶の間に最も近かった格闘技がK-1ヘビー級である。
「立ち技最強」をキャッチコピーにしたK-1は、あらゆる立ち技格闘技スタイルが集結する異種格闘技戦であった。
その後洗練されていき、K-1独特ともいうべき格闘技スタイルが生まれる。
前蹴りとローキックを主軸とした防御主体のキックボクシングである。
このスタイルは強く、玄人好みのものだったが、大半の観客には受けなかった。
アーネスト・ホースト、武蔵、は最たる例である。
アンディ・フグが受けたのは日本人好みの要素が多かったからだ。
空手スタイル、「必殺技」踵落とし、そして劇的KO負け。
勝ちと負けのはっきりしたアンディだから人気を勝ち得たのである。


しかし、K-1は衰退してゆく。
観客は劇的KOを期待したが、洗練されたK-1ファイトスタイルではその期待が叶えられることは難しかった。
変わらない顔ぶれ、ファイトスタイルのマンネリ化、客は離れていった。
観客はさらなるリアルを求め、PRIDEに代表される総合格闘技が隆盛する。
K-1は革新を迫られた。
結果、ミドル級開拓を進めることとなる。
ミドル級の利点は、競技人口母数、スピード、テクニックである。
立ち技に限定しても様々な顔ぶれとファイトスタイルを発掘でき、立ち技ルール、総合ルールの使い分けも進んでいった。
これらの要因によって生まれたのが、
ボクシング主体から派生したキックボクシングの魔裟斗
レスリング出身のバランスの良さを活かしたパウンドの山本“KID”徳郁
レスリングを基盤に柔術を発展させた総合の須藤元気
といったさまざまな格闘スタイルのスターたちである。


魔裟斗×須藤元気

須藤元気×山本“KID”徳郁

山本“KID”徳郁×魔裟斗
http://video.google.com/videoplay?docid=-7193685847708881434&q=masato+kid


このうち二人がリングから退いてしまった今、ミドル級があまり盛り上がらないのも無理はない。
今大会は佐藤嘉洋が優勝したが、体格差とローキックを活かした「ミドル級のセームシュルト」であり、決して魅力的なファイトとは言えないものだった。
こうなってしまってはファイトスタイルの違いを楽しむくらいしか見るところが無いのだ。
そして総合格闘技がある以上、立ち技限定の競技はもはや「最強」を謳うことも困難である。
こう言えばわかりやすい。
佐藤嘉洋×五味隆典」どちらが勝つか?


個人的には、メンタルが充実した状態での「山本“KID”徳郁 × 五味隆典」が最も見てみたいカードである。



五味隆典 -Wikipedia-