破壊による獲得

結構有名だが強いて見ようとは思わない、そんな映画の筆頭であったデヴィッド・フィンチャー監督『ファイト・クラブ』。
レビュー評価の高さに納得の作品だった。


ファイト・クラブ』は作品名で損をしていた。
原因は例のテレビ番組である。
90年代の残り香を強烈に放っていた番組は、以前のドギツいバラエティに慣らされていた視聴者にとって格好のノスタルジアであり、さらに出演者自身を最近見かけなくなったヤンキーにすることによって、ヤンキーを卒業した元ヤンに当時の空気を思い出させるものだった。
日本の三割を占めるといわれるヤンキー層を取り込み、ボクシングというヤンキー含有率の高い素材を扱うことで潜在的ヤンキー層をも取り込んだこの番組は成功しないわけがない。


ガチンコ!ファイトクラブ」の方が後発にもかかわらず、映画『ファイト・クラブ』の方が陰に隠れるのは必然だった。
コアな映画ファンはテレビからは離れて映画を観ることが可能だが、たいていの一般的な映画ファンは『ガチンコ!ファイトクラブ』も知ってしまっていた。
同じなのはタイトルだけ、とは思いながらも先入観を払拭するには至らず。
あの番組を見てからあの映画を観ようと考える人は少ないであろう。
また当時の番組の視聴層が、ある特定のトライブに属している人々であったとしたら、そのメンバーが映画の視聴層であったかは疑問が残る。
早すぎたとも評される『ガチンコ!
だが、バラエティ、ヤンキーの時代的転換期として作られるべくして作られた、そして消えるべくして消えていった、時代相応の番組であるといえるだろう。


あえて混同した言説によって、興味、視聴層、消費カテゴリを横断し、現存している『ファイト・クラブ』の視聴者が増えることを祈るばかりである。
じゃあの。


ガチンコ! - Wikipedia
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