実況動画時代

ゲームにも周期というものがあるらしく、現在ニコニコ動画ではファイナルファンタジー5の実況プレイ動画が豊作である。
SFC版の発売が1992年、小学生ごろに初プレイをした人達(=現在大学生くらい)が再度プレイしているようだ。
FF5が人気を集めているのには様々な理由がある。例えば


・全員青魔道士、全員魔獣使い、といったジョブ縛りが可能
通常ならば効率を求めてバランスのとれたパーティ編成をしてしまうが、あえて偏ったパーティにすることで「戦略性」というハードルを設けることができる。プレイし尽くされていたはずのゲームに新奇性が生まれる


・ツッコミどころ満載
比較的古いRPGはご都合主義の展開が多い。幼いころは感情移入して当然と思われた物語展開が、大人になった今見てみると?なところが発見できる。


・ルーティンとイベントの間が絶妙
ゲームの実況動画は間が命である。雑魚戦というルーティンはゲームに関係ない雑談時間を生み出し、話すネタが尽きるころにイベントがあるのでテンポが良くなる。見ているほうも飽きがこない。


動画にバリエーションを加える余地があるために、動画投稿者の数も増え、必然的に内容の質も上がっていくのである。
そしてなにより、コメントシステムが実況プレイ動画を可能にしたといっていいだろう。
クリアするのに何十時間とあるゲームをしながらマイクに向かって喋り続けるというのははっきり言って異様な光景だ。
並の神経では続けることができないだろう。だが見たものの反応を、しかも数値化して確認できることはモチベーションになる。
フィードバックが可能であればシリーズを経るにつれて投稿者が配信レベルを上げていくことも可能なのだ。
おもしろい動画は当然伸びる。ツボにはまるかどうかは別として、ランキング上位の動画はたしかに面白いのだ。みんなのコメント数は案外正しい。


古くはYoutubeが時間無制限だったころ、ゲームのプレイ動画といえば最速クリアの動画が主流であった。
しかし、最速のプレイを見た後には独特の寂寥感が漂ってしまう。
「こんなゲームにマジになっちゃってどうするの」
Youtubeは「かっこよさ」を追求し、一方ニコニコ動画は「にこにこ」を求めた。
無論、業界一位と同じことをしないというのが鉄則であるわけだから、追い求めるものが違ったということもあるだろう。
だがこれを連帯を重視する国民性・民族性に結びつけて論じることはあまりにも魅力的である。
動画にコメントをプラスする技術はそんなに難しくないように思えるが、
日本以外でこのようなサイトが人気を集めているといった話を聞かないのはなぜだろうか。
投稿動画に時間制限を設けた時点で、少なくとも日本におけるYoutube時代は終わった。
YoutubeはPV機能に特化し、ユーザー同士のコミュニケーションは掲示板レベルから発展しなかった。
ニコニコ動画はコンテンツを介したユーザー同士のコミュニケーションに焦点を当て成功した。
縛りプレイのように自らが設ける制限は可能性を生み出すが、システムの制限はただの足枷にしかなりえない。
ニコニコで投稿制限がきつくならないことを祈るばかりだ。
コンテンツが無ければコミュニケーションすら生まれないのだから。


FFシリーズに限らず実況プレイ動画には良作が多い。
ここではあえてランキングには入っていない良作を掲載する。